重訂解體新書 -- 鳩盧暮欺解體譜 文政9年 初版解体新書の出版は疑いもなく画期的な出来事であったが、なにぶんはじめての企てであったので内容的に十分とはいえぬものであった。玄白自身もこのことを認め改訂を高弟の大槻玄沢に命じた。
師命によって玄沢はクルムス解剖書を訳しなおした。それが「重訂解体新書」である。この翻訳は寛政10年(1798)にいちおうでき上がっていた。出版はこれもずっと遅れて文政9年(1926)、つまり玄沢の没する前の年にやっと実現した。
出版された本書は序文と判例などを収めた第1冊のほかに、本文4冊、名義解6冊、附録2冊より成り、全部で13冊、それに京都の中伊三郎が作った銅版の解剖図1冊が付いている。
その本部4冊は解体新書の本文4冊と内容的にだいたい一致する。すなわちクルムス解剖書の本文のほぼ完全な訳である。その翻訳の正確さは解体新書より数段も上である。名義解および付録合わせて8冊は、玄沢が数多くの蘭書を読んでまとめ上げたもので、彼の知識の博さがよく示されている。これらの部分が本書全体の3分の2を占めるので、この書はもはやたんなる訳書ではなく、むしろ玄沢の著者といえるであろう。
重訂解体新書の銅版解剖図は中伊三郎の作である。その扉絵では題名は上部に横に「鳩盧暮欺解体譜」とあり、翻訳者として右側にたてに「天真楼翻刻」、左側にたてに「芝蘭堂再鐫」とある。天真楼とは杉田玄白、芝蘭堂は大槻玄沢である。また左側に小さく「浪華中端」と、銅版作者の署名がある。
いずれにしても「重訂解體新書」は江戸時代の解剖学書としてもっとも完備したものである。
小川鼎三 『解体新書』 (中公新書)

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